
打撃のスペシャリストである筆者が打撃技術を分析していく連載コラム。今回は6月25日に行われた「K-1 WORLD MAX 2011 -63kg Japan Tournament FINAL」にて、大会最年少の18歳で第3位に入賞した野杁正明にスポットを当てる。K-1からさかのぼること約2カ月前、4月30日に『Krush』で“狂拳”竹内裕二に初KO負けを喫している野杁。そこから見えた彼の弱点と課題とは?
■1Rからすでにあった危険な兆候
4月30日に行われた「Krush−60kg初代王座決定トーナメント」。下馬評での優勝予想はK-1甲子園2009の覇者であり、Krushで負け知らずの野杁を押す声が格闘技関係者の中では圧倒的に多かったと記憶している。かく言う私もリーチ、ブロッキングの固さ、さらにはK-1ルール全盛の現代でパンチに固執した攻撃ではなく、蹴り合いの技術においても頭一つ抜けている野杁が優勝するのでは……と予想していた。
そんな予想も“狂拳”竹内には見事に机上論にされてしまった。既に周知のとおり、3R、竹内が恐ろしいまでの左フック一発で野杁をKOに仕留めたのである。試合を振り返ってみよう。
1R序盤からリーチ差を活かしてローの返しを巧みに織り交ぜながら、野杁がペースを握っている様に見えた。
しかし、竹内も止まってブロックする野杁のブロッキングの盲点を突くかの様に、両側面のブロックの空きスペースをパンチのコンビネーションを織り交ぜながら突いていく。パンチのブロッキングからローを主体に返し、時折、左フックも返していく野杁。結果論ではあるが、このブロッキングからの左フックの返しが竹内に付け入る隙を与えてしまった。
2Rも同様に、ローの返しと左フックの返し、さらに前へ出る竹内を止めるため前蹴りのストッピングを用いる野杁だが、前に出てくる竹内を止めることは出来ず。竹内の前に出る圧力は見た目以上に力があるせいだろう。それでも、技術に長けている野杁は巧みな攻防で間合いを詰めさせずロー、前蹴り、左フック。そして、右ヒザ蹴りを織り交ぜていく。
そんな中、竹内の出際に右ストレートを合わせた野杁がダウンを奪取する(ただしこれは全くのノーダメージ。竹内の左手に当たって滑って倒れたスリップダウンだからである)。
過去に野杁とのスパーリング経験がある私だが、彼の一番の武器は伸びてくるこの右ストレートであると認識している。やや右脇が空き気味なのだが、それがかえって右手の力みを解き、なおかつ見え難い角度からのパンチになっている。競技は異なるのだが、修斗のリオン武の右ストレートと酷似している。
3Rに入り、ダウンを奪われて明らかに劣勢である竹内はこの展開を打破しようと1、2Rとは比較にならないくらい前に出る圧力を強めながら、パンチのコンビネーションを何度も繋いでくる。そのコンビネーションが均衡を打ち破るかの様についにヒットし始める。
前に出る圧力を利用しながら野杁をロープに追い詰め、右のボディストレート→左フックを放つ竹内。その左フックが顔面を見事に捉えた。この試合で上・下のパンチのコンビネーションからの左フックの繋ぎは初めてだったせいだろう。
野杁は右手のブロッキングの位置が低いまま左フックに反応が出来なかった。3R目にして上・下の繋ぎパンチを繰り出した竹内の頭脳的対応は見事である。
さらに前へ出る圧力を強める竹内は、何度もパンチのコンビネーションから得意の左フックに繋いでくる。野杁が竹内のパンチをブロックして左フックを返してくるところに、さらに左フックをダブルで返していく竹内。2発目の左フックがクリーンヒットする。
■野杁が左フックをもらってKOされた理由
この2発目の左フックは相当効いた様に見えたが…………
ここから吉鷹弘がなぜ野杁が竹内の左フックをもらってしまったのかを分析・解説!
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