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 2010.11.3  「振り返れば、やっぱり格闘技」 第83回 by熊久保英幸



 当時、地方大会も巡っていた『ゴング格闘技』編集部で話題になっていた選手がいた。ボクではなく違う編集部の人間が取材に行った神奈川大会で、いい選手を見つけたというのだ。それが谷川光だった。たしか、当時の評価は強いけれどポカをよくする選手、というようなものだったと記憶している。

 極真の大会史における小さな巨人と言えば、緑健児、三明広幸などが挙げられるが、この谷川も伝説にその名を刻む選手の一人だと言えるだろう。全日本ウェイト制軽量級では早くから頭角を現し、第9回では3位入賞、第11回では優勝候補本命として高い評価を得ていた成嶋竜との空中戦を制して優勝している。

 しかし、なんと言っても谷川がその存在感を示したのは秋の無差別級全日本大会の方だ。ここで突如、谷川が重量級の相手に見せたテクニックこそ、後に“風車戦法”と名付けられ、谷川自身に“人間風車”というニックネームが付いた要因であった。

 地方大会かウェイト制だったかは忘れてしまったが、全日本大会前に当時の編集部員が、「谷川の動きが凄いんですよ。クルクル回って動きが止まらないんです」と報告してきた。ラッシュをかけながら回り込む選手は当時からすでにいたので、それと似たようなものだと思っていたのだが、実際に全日本大会で見たらまったく違うテクニックだった。

 谷川がインファイトを仕掛けて突きを連打する。すると相手も突きか内股への下段廻し蹴りを返してくるところ、谷川は左右にクルッと回り込んでサイドから攻めを続ける。相手にしてみると目の前から突然相手がいなくなったような感覚となり、振り向いて反撃しようとすると谷川は再びクルッとサイドに回り込んで攻撃を続ける……。

 この「クルッ」と回るタイミングが絶妙なのだ。相手を軸に谷川自身が接近したままクルクルと回り続ける。まさに人間風車。全日本大会でこれを披露した時は、場内からどよめきが起こり、次の試合に谷川が出てきた時には大きな歓声が沸き起こった。谷川は観客のハートをわしづかみにしたのである。

 特に岩崎達也と2年連続で対戦した時は、最高のクライマックスだった…

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