
「極真空手、思い出を挙げればキリがない」の第33回目。今回も、ボクがこの目で見た中で誰が何と言おうと極真空手史上最高・最強の空手家と信じて疑わない数見肇についての思い出を振り返ってみたい。
『第1回オープントーナメント全関東空手道選手権大会』を制した数見は、同年10月30〜31日に開催された『第25回全日本大会』に出場。同じ若手でライバルと目されていた、前年3位の岡本徹を破って決勝戦へ進出し、前年と同じく田村悦宏と決勝戦を争った。
この決勝戦が凄くいい試合で、数見も全てを出し切ったという想いがあったのか、最後の延長戦が終わるとなんと笑顔で田村に抱きついた。数見が試合場でこのような感情的表現をしたのは、後にも先にもこの1回だけだろう。あとでこの時のことを聞くと、なぜ自分がああいうことをしたのか分からないが、とにかく気持ちがよかったからやってしまった、というようなことを言っていた。おそらく、その時点での全力を発揮できたということなのだろう。
また、岡本との一戦では珍しく上段廻し蹴りを繰り出し、意表を突かれた岡本は技ありまでには到らなかったがもらってしまった。決勝戦での笑顔といい、この時の数見は後のイメージが定着した時の数見とはだいぶ違っていたのである。
違ったという意味で興味深いのは、この頃までの数見は下段廻し蹴りに大きな特徴があった。下段廻し蹴りは数見の代名詞とでも言うべき得意技だったが、初期段階では実に独特なフォームだった。覚えている人もいるかもしれないが、初期の数見の下段は膝がいったん上に上がり、次に膝から下が跳ね上がって弧を描くように振り落とされていたのである。それを左右でやるから、まるで数見の足は横8の字を描くようだった。
松井館長はこの数見の独特なムーブを……