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 2009.7.1  「振り返れば、やっぱり格闘技」 第51回 by熊久保英幸



 
前回、タイでのペットンガン戦のことを書いたが、立嶋はもう1試合タイで試合を行っている。広場のようなところでやったスペシャルイベントだったと思うが、前田憲作と共に出場した。対戦相手はゴーンサヤーム。

 この試合でゴーンサヤームは掴まないヒザ蹴りを多用し、パンチで倒そうとする立嶋を引き離した。誰が見ても完璧な負け……日本から来た取材陣はどんよりムード。そのムードを吹き飛ばしてくれたのが前田憲作だった。

 前田はタイ人とミドルの蹴り合い、首相撲で真っ向から渡り合って、5Rは相手と見合いながらグルグルとリング上を旋回。この時の光景は妙に脳裏に焼きついている。結果は前田の判定勝ちで、試合後に彼は「こんな試合がしたかった」と語った。

 つまり、1と2Rは様子見をして3と4Rでポイントを取って5Rは流すというムエタイの闘い方をやりたかったというのだ。このムエタイ式で勝つのが今回のテーマだったという。彼は「藤原敏男でもこういう勝ち方をしたことがない。ムエタイなんだから、向こうの闘い方に合わせて勝つのが本当の打倒ムエタイだと思った」と、前田は力強くコメントした。みんな笑顔で祝福していたが、僕はちょっと複雑な感情を抱えていた。

 イベント終了後、僕は当時ゴン格のタイ通信員をやっていただいていた青島さんの車に乗せてもらってバンコク市内に戻った。この試合がかなり締め切りギリギリで、タイで写真を現像して選び、帰国したらすぐにレイアウトが出せる準備をするためだ。当時はメールもデジカメもなかった時代だった。

 車中、青島さんは「外国人選手はみんなあの“テンカオ”でやられてしまうんですよね」という話をしてくれた。「テンカオって何ですか?」と僕。「ゴーンサヤームがやっていた、掴まないで蹴るヒザ蹴りですよ」と青島さんは教えてくれた。

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