
「極真空手、思い出を挙げればキリがない」の第12回目。今回も全日本ウェイト制大会にまつわるエピソードを綴る。
過去ウェイト制重量級で4度も優勝している七戸康博は、“怪物”というニックネームの方が有名だが、別名“ウェイト制の鬼”とも呼ばれていた。七戸が秋の無差別全日本で負ける場合はほとんどが体重判定によるもので、体重差があまりないウェイト制ではそれこそ無敵の強さを発揮していたからだ。
なので当時、極真関係者からよく聞かされていたのは「七戸こそ最強」という評価だった。単純に強さだけだったら、彼にかなう者はいないと。それだったら七戸が無差別でも優勝しているはずじゃないかと思われるが、試合は単純に強さだけの競い合いではない。戦法や戦略というものがあるため、その点がまずいと特にトーナメントは勝ち上がることが出来ないのだ。
その七戸と黒澤の対戦。両者は1987年の『第4回全日本ウェイト制』決勝戦でも対戦し、この時は七戸が勝っている(この当時、黒澤は松井章圭、増田章と共に三強と呼ばれていたから、やはり七戸は強かったのだ)。しかし、勢いは黒澤にある。今回は黒澤が勝つだろうと誰もが思ったに違いない。
試合は突きと下段の応酬でかなり激しいものになった。場内は沸きに沸いていたのだが、途中、黒澤が自分の手を見て何事か審判に話しかけた。ドクターチェックとなり、黒澤にドクターストップがかけられる。場内は突然の幕切れに「えーっ!?」と騒然となった。